ずっと気になっていた。
絶対に見てはいけないと言われた引き出しが。

今までは我慢が出来たけれど、さすがにそこが輝きだしてからは我慢が出来なかった。
だから開けてしまった。禁断の箱を。
知ってしまった。禁断の箱の中を。

「シルキーさまが・・・?」
ガタッ
背後で音がした。
慌てて振り返ると、そこにはシルキーの姿。
「あ、あのシルキーさま・・・」
「開けるなって言ったのに・・・。見るなって言ったのに・・・」
「シルキーさまごめんなさい。シルキーさまごめんなさい。シルキーさま・・・」
謝り続けていたエロスが顔を上げたとき、シルキーは既に糸を張り巡らせて自分の殻に閉じこもっていた。
「私じゃ・・・あなたの心は開けないのですか?」
「うるさいっ!出ていけっ」
エロスは何か言いかけた口を固く結び、拳を強く握ってシルキーに背を向けた。
「失礼します」

ここは闇ばかりの世界。
何もない閉ざされた空間。
その中でエロスはペタリと座り込んだ。
「エロスさま、大丈夫でございますか?」
「ねぇ、ミューズ。僕じゃシルキーさまの心を開くことは・・・あの玉座に座ることは出来ないのかな」
「そんなこと無いと思いますです。わたくしはあの玉座はエロスさまの為に作られたものだと思いますです」
「僕の為に・・・」
「はいでございます。きっとシルキーさまは、エロスさまを待っているのでございますよ」
「そうだね。そうかもしれないね・・・」
(エロスさま。エロスさまがシルキーさまの心をお開きになりたいと思うのと同じくらい、わたくしはエロスさまの心を癒したいと思っているのでありますよ。だから)
「そんなに泣かないでくださいです。エロスさま」
優しく揺れるロッキングチェアになろうか。
それとも暖かい座布団になろうか。
必死に声を押し殺して泣くエロスの心を癒すには、何がいいのだろうと考えたミューズは。
「わたくしの膝で良ければお使いください」
そう言うことしか出来なかった。
「ありがとう。ミューズ」
「・・・いいえでございます」


そんなに簡単な事じゃないのは分かっていた。
だけど心を開く事が出来なくても、少しだけでも手助けがしたかった。
閉ざされたシルキーの心という世界で生まれた命。
玉座が手に入らなくても、私はあなたに尽くします。

玉手箱の中身を。
天使の輪を持って、閉じこもったシルキーに近付く。
「シルキーさま。ご自分の殻に閉じこもらず、ちゃんと現実を見つめてください。これはあなたが受け入れなくてはならない事実なのです」
「うるさい・・・」
「ちゃんと現実を受け止めないと、あなたの求めている物は手に入りませんよ」
「うるさい」
「シルキーさまっ! こんな世界でのごっこ遊びはいい加減におやめください!」
「黙れっ!」

シャキン
コトッ

闇の世界で『生』がひとつ消えた。

「エロスさま・・・」
いつの間にかそこにいたミューズが、人形と化したエロスを胸に抱きしめた。
「シルキーさまは可哀相なお方。愛するということも、愛されるということもお知りにならないのですね」
「うるさい!生意気なっ」

シャキン
コトッ

また闇の世界で『生』がひとつ消えた。
シルキーは周りの糸を解くと、足元に落ちている小さな二つの人形を強く抱きしめた。

果たして開かれたのはパンドラの箱だったのか。
それともただの玉手箱だったのか。

END


せっかくなので(?)藤宮のサイトから持ってきました。
ずっと書いてみたかった話を、勢いだけで書いてみたものです。
アニメに沿ってみましたが、なんだか微妙。
とりあえずシルキーがかけた事に満足したみたいです(笑)

 

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